晩杯屋、BAKEは宝くじ

2017年10月19日

今年の7月頃に、晩杯屋がトリドールに買収され、BAKEがポラリスに買収されました。

買収額は公にされていませんが、とても高い評価が付いたと推定されています。

さて、こういうニュースが出ると、同じ飲食業の経営者としては、自分のところも高く売れるのだろうか?と気になると思います。

結論から申し上げますと、前段の事例は、宝くじに当たったようなものだと理解されたほうがいいと思います。

宝くじに当選する確率を上げることはできると思います。

例えば何の差別化もされていない居酒屋を10店舗やっている会社よりも、模倣が難しく、顧客から高い支持を得ているような居酒屋を10店舗やっている会社のほうが、宝くじに当選する確率は絶対的に高いです。高いというよりも、前者はほぼ当選確率が0で、後者で宝くじレベルだと思います。

何故宝くじになるのかと言いますと、M&Aは全て相手ありきだからです。

どれだけ魅力的な会社を創っても、それを評価する人がいないとそれは成立しません。それには色々な要素が絡み合います。

例えば、前述の2社はタイミングが良かったと思います。

上場企業の株価が上向いているため、買い手の立場としては資金調達がしやすく、投資目線を上げやすい環境がありました。

また、平成28年の法改正により、ファンドに出資する投資家はプロ投資家であることが前提となったため、ファンドとしてはハイリターンを求めるために、多少リスクのある投資に対して積極姿勢に変わってきていることもあると思います(詳細は小坂弁護士の「ポラリスのBAKE巨額買収にみるファンドM&Aの傾向」にて)。

また、高く買うということは、買収対象となる企業・事業だけでの回収を想定しない、ということが前提となります。M&Aで買収する場合、その対象事業の収益を鑑みて、3年~5年で回収できるように投資金額を決定するのが一般的です。しかし、仮に回収に10年かかるような金額で買収するとなった場合、ただ10年かけて回収できるのを待つのかというと、そうはしません

例えば、買収後にその事業に再投資を施し、出店を飛躍的に加速させるとか。あるいは、そのチェーンのブランドを活用した物販などに参入して新たな収益構造を構築するとか。このような形で収益を拡大し、結果3年~5年で回収出来た、という状態を目指します。

そういう意味では、顧客の支持が厚い業態だったとしても、飛躍的な拡大が見込めなければ、そこには大きな投資はできません

晩杯屋、BAKEは色々な細かいことが偶然にしてタイミングが一致したために成立した宝くじ案件です。私の担当のみならず、同じぐらいの希望条件で売却を目指す飲食業経営者を多数知っていますが、事実としてその殆どはうまくいってません。

譲渡を考える際には宝くじをは目指さずに、3年~5年での回収が相場と言われていますので、5年回収の金額で買ってもらえるように、最大限事業を磨く、ということをお勧めします。

執筆:中原 陸