株式会社円座フーズサービス代表取締役 堀場博史氏に聞く

市場淘汰の激しい飲食業界で、M & A により躍進を続ける企業がある。
M&A を成功に導くには秘訣は何か?
佐藤こうぞうフードスタジアム編集長とM&A 専門家、照井久雄の2人が、今注目の飲食企業に乗り込み、M&A 戦略の本質に迫る

小さな会社でもM&Aはできる!業績好調な新業態を戦略的に売却

s_20151215_ENZA_0014 円座フーズサービス(横浜市)の堀場博史社長は、1971年生まれの44歳。大学卒業後、大手部品メーカーに入社したものの、努力の結果が分かりやすい形で現れる飲食業界に惹かれて転職。約3年で必要なノウハウを身に付け独立した。

2000年、串焼きを中心とした居酒屋「〇座」(ルビ・まるざ)をオープン。11年には、牡蠣料理をメインとした新業態「かき小屋〇座」にもチャレンジ。順調に業績を伸ばしてきたが、その4年後、出店した「かき小屋〇座」3店舗を全て売却。中小企業ならではのスピード決断で、戦略的かつ効果的な店舗運営のためM&Aを活用した。

 

 

 

 

 

 

業績好調な新業態店も戦略的に売却を決断

佐藤 2000年にオープンした店が1号店ですね。

堀場 はい。横浜鶴ケ峰の「〇座」が最初の店です。

照井 店名はなぜ「〇座」にしたんですか?

堀場 円を描くように皆さんに座っていただいて、楽しい時間を過ごしていただきたいと考えました。

佐藤 居酒屋の原点ともいうべき考え方ですね。料理はどのようなものを?

堀場 焼き鳥がメインです。最初の頃は創作イタリアンもやりました。

照井 その後はトントン拍子に業績を伸ばしてきましたね。

堀場 お陰さまで順調です。

佐藤 そんななか、新業態として「カキ小屋〇座」を始められたのが2011年。

堀場 はい。実は、ずっとウチに通ってくださっているお客さまのなかに日本かきセンターの社長さんがいらっしゃいまして、その御縁で牡蠣を扱うことになりました。

佐藤 日本かきセンターといえば牡蠣の卸売の大手ですね。最初は既存店で牡蠣料理も扱うことにしたわけですか?

堀場 いえ、最初から牡蠣料理の店としてスタートしました。1号店は既存店を業態転換して大船に。その後、綱島、横浜西口にオープンしました。

照井 新業態ということでのご苦労はなかったんですか?

堀場 お陰さまで順調でした。

照井 グルナビでも上位にランクインしていますよね。

堀場 はい、神奈川県で1位になりました。

佐藤 牡蠣ブームもありましたね。牡蠣人気は今もトレンドとして続いています。経営数値も拝見しましたが、ずっと黒字で、営業利益も15パーセントくらい──、悪くないですよね。今回、その「かき小屋〇座」を売却されたわけですが、理由は何だったのでしょうか?

堀場 一番大きな理由はバランスシートの改善。借り入れを一旦、きれいにしようと。それともう一つの理由は、「かき小屋」は僕には合わないのかなという感じもしていましたので。

佐藤 どういうことでしょうか?

堀場 焼き鳥中心の「○座」と比べるとリピート率が低く、30パーセントくらいです。常連さんが集まってワイワイと楽しんでくれるような店を作りたいと思っていましたので、ちょっと違うのかなと……。それと牡蠣は冬と夏の売り上げの差が大きくウチのような小さい会社だと、厳しいということもありました。あくまで感覚的なことなんですが、このままでは先細りかなと思いました。

佐藤 客単価はどのくらいだったんですか。

堀場 3800円くらいです。焼き鳥中心の「○座」は3200円くらいなので、比べるとちょっと高い。業態として面白いし、広げていきたいという気持ちもあったのですが、思い切って売却することにしました。

社員に活躍の場を提供してくれる企業に

佐藤 5月頃にインクグロウさんにM&Aに相談をされて、10月末には複数の外食ブランドを展開する会社への売却が決まったということですが、何社かと交渉されたのでしょうか?

堀場 4社ほどお会いさせていただいたうえで決めました。

佐藤 それは大人気でしたね。立地はいいですし、買い手にとっては大きなメリットがあったと思います。売却に当たって、社員の方たちの理解はすんなりと得られたのでしょうか?

堀場 残りたいという者も数名いて、一生懸命、説得しました。僕がなぜ、売却先にその会社を選んだのかを説明して、「君に足りないところはこういうところだから、その会社に行って勉強すれば、必ず幅を広げることができる」といった話をしました。

照井 先方の社長にも来ていただいて、説明会のようなものをしてもらいましたね。

佐藤 4社のなかでその会社を選んだ理由は何だったんですか? 金額的に一番高かったとか?

堀場 金額的には4社とも同じくらいでした。人材教育をほかの3社さんよりもしっかりやってくれそうだと思ったからです。それに企業規模が大きいし、新規出店もウチよりも活発にやっておられます。その分、社員が活躍できる場も多いと思いました。最後の決め手は社長さんの人柄ということになるのでしょうか。多分、年齢的には僕よりも少し若いと思うのですが、しっかりされていて、ウチの社員が行っても、必ず活躍できる場を用意してくださると確信しました。

照井 それにしても良縁でしたね。先方の会社には8月くらいに打診をして、社長同士で会ってもらったところ意気投合されて、そこからは話がトントンと進んでいったという感じでした。

佐藤 4社とも同じくらいだったとのことですが、売却価格には満足されていますか?

堀場 はい、満足しています。

照井 営業利益の3倍くらいと保証金、という感じでしたね。物件の引継ぎも、人材の異動もスムーズに進んで、よい形で決まったと思います。

M&Aの成功で次の展開に進める

佐藤 まさかM&Aができるなんて、という疑問や不安もあったんじゃないですか?

堀場 もちろん、ありました。初めての経験ですし、ウチのような小さな会社が相手にされるのかなあ、と。しかし、インクグロウさんから細かなところまで説明していただいたので、すごく安心して話を進めることができました。

佐藤 売却資金は借り入れの返済に充てるわけですか?

堀場 全額ではありませんが、財務改善に使いたいと思います。

佐藤 銀行の評価も上がるでしょうし、次の展開を考えやすい環境になったわけですね。新しい業態を考えていらっしゃるんですか?

堀場 考えてはいるんですが、売却が終わったばかりですので、もっと勉強しようと思っています。まだ何も決めていませんが、客単価が2300円から2500円くらいの業態を手掛けることができたらと思っています。

佐藤 絞り込んでプライスダウンしていきたいということですね。

堀場 地域の方に気に入ってもらえるような店づくりをやっていきたいですね。子どもの頃、よく焼き鳥屋さんに行ってテイクアウトでタレ付きのレバーやねぎまを買いました。父親に連れて行ってもらったり、母親が買ってきた焼き鳥が食卓に並んだりもしました。その味を今も忘れられないんです。漠然としていますが、そんな店がつくれたらいいかなと思っています。僕も44歳。そろそろ「堀場、やったな!」と、みんなに思ってもらえるような事業をしたいですね。

照井 ぜひ、次の展開を期待しています。頑張ってください。

佐藤 本日はありがとうございました。

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佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』の編集者生活を経て独立。飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、編集長をつとめる。
『東京カレンダー』編集顧問を経て、業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を立ち上げ、編集長をつとめる。
照井久雄
経営コンサルタントとして提携フランチャイズ本部の立ち上げをした後、証券会社にて公開引受業務や中堅中小企業の資金調達の支援を行う。その後、中小企業を中心としたM&A 業務に従事。
2013 年、インクグロウに入社、M&A担当部門の取締役として中小企業のM&A 支援を行っている。中小企業診断士。